積みゲー崩しと備忘録のようなもの

ひたすらゲームの感想を残すブログ

The Stillness of the Wind

 

 

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store.steampowered.com

Steamで購入していたThe Stillness of the Windを遊んでいました。
SwitchやiOSでも遊べるようです。

 

こちらのゲーム、決してほのぼのゲームではないのでご注意ください。

グラフィックは美しいのですが、シナリオははっきり言って“鬱”。
わたしは他のレビュアーさんのようにあまり前向きに捉える事が出来なかったので感想パートはどちらかというと心にダメージを受けた悲しみの感想がメインとなっています。

 

一言感想:つらい

 

 

あらすじ

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さびれた農園で静かに暮らす、ひとりの老女。
彼女の名前はタルマ。
数匹のニワトリ・ヤギ2頭と共に日々を過ごす彼女の元へは毎日のように遠く離れた兄弟たちからの手紙が届く。
タルマは今日も手紙を待ちながら いつもと変わらぬ朝を迎える。

 

ゲームについて

・日本語音声……なし
・日本語字幕……あり
・主人公……1人。女性、老婆
・仲間……なし。飼いニワトリやヤギはいる
・ゴア表現……グロは無いけれど、極端にホラーが苦手な方はちょっと気を付けた方が良いかもしれません。

そんなに身構えるほどではないと思いますが、”ホラーっぽい演出”だけでも怖いという方は注意。

 

ゲームに関する説明はほとんどありません。
畑を耕し、井戸から水を汲み、飼っているヤギの乳でチーズを作りましょう。
あるいはかごを持ってニワトリ小屋を覗けばタマゴが手に入ります。
かごを持ったまま出かければ、周辺に生えているきのこを収穫することもできます。
自宅では食事が作れますので時々タルマにご飯も食べさせてあげてください。

 

タルマはおばあちゃんなので移動・行動速度はとてもゆっくりです。
そしてお年寄りの1日は非常に短いです。
何をするか、行商人から何を購入するか、考えつつも急いで日々を送りましょう。

 

……この説明だけ見ると老婆が主人公の牧場物語みたいで楽しそうなのですが、一言感想にも書いたようにこのゲームはほのぼのした優しいゲームとはいえません。
悲しい物語があまり得意でない方はお気を付けください。

 

プレイ時間は3~4時間ほどかと思います。

感情移入出来るほどタルマは喋らないので、ひょっとするとこのゲームでここまで精神を打ちのめされる人は稀なのかもしれませんが、プレイされる場合はメンタルが不調じゃない時にプレイするのをおすすめします……。

感想(※この先ネタバレあり)

※この先ネタバレがあります!※

 

 

 

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美しいグラフィック、表情は見えずともなんだかとてもかわいらしいおばあちゃん。
わたしは自らの祖母と犬猿の仲なせいもあり、こういった作品で可愛らしいお婆ちゃんを見ると“理想のおばあちゃん”に出会えたような気がしてとても嬉しくなります。

 

だからこそ、このゲームには打ちのめされました。
どういう風に打ちのめされたかに関しては後程触れる事にしましょう。

 

さて、遊び方がわからなさすぎて序盤ちょっと失敗した気がしたので1時間ほどプレイした所で一度データを消去して最初から始めました。
具体的に言うと、ヤギを増やす事には成功したものの徐々に餌が足りなくなりヤギを餓死させてしまったのです。
悲しそうなタルマを見ていられず、やり直しを決意。
今度は餌を切らさないように、行商人が干し草を売っていたら絶対に買うようにしていました。
そのせいで(?)雄ヤギは買えずヤギを増やすことはできませんでしたが、馬を飼っていると勘違いされそうだと揶揄されるほどの干し草を手に入れ、ニワトリを増やして沢山の卵を集めるほのぼのとした日々を送っていました。

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しかし、わたしは後に気づくことになります。
このゲームに救いなど無いのだと。

 

タルマを気遣うきょうだいたちからの手紙。
孫が生まれた弟のガルザからの手紙を読むと、ガルザも、そして妹のエイミーも、皆タルマと同じように年老いている様子が見えてきます。
タルマと喧嘩をして(?)家を出ていた娘のソラからの手紙を受け取ったあたりで徐々にゲームの雰囲気は怪しくなってきます。

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人の居ない町。
姿を消した小鳥たち。
家畜を狙って徘徊し始めるオオカミ。
街で楽しく過ごしていたはずなのに、いつからかどこかへ消えてしまったという妹のエイミー。

 

ヤギは何故か途中から乳が搾れなくなり、ニワトリは1日1羽ずつ減っていきました。

 

そして枯れる井戸。

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ひどすぎるよ神様。
タルマおばあちゃんを生きさせてよ。

 

どしゃぶりの雨が降ってるんだから水差しに水が入ってくれてもいいと思うんだ。
でも実際は井戸が枯れた後の水差しは空っぽのままです。理不尽。

そうなると当然作物に水をやることもできず、畑で育った作物や花は次々に枯れていきます。

 

薪がなくなって料理も出来なくなり、作りためていたチーズも全滅。
元気だった頃は乳をしぼりたくても小屋の中でしょっちゅう休憩していたヤギは何故か悪天候の中、放牧地で立ち尽くして死んでしまいます。
なんでや!理不尽すぎるぞ小屋に入れ!
それがダメならせめてタルマおばあちゃんの家の中で最期まで一緒に居てやってよ……あんまりだよ……。

 

他の方のレビューを少し覗いたところ、どうやらこのゲームはマルチエンディングらしい(ただしタルマおばあちゃんを助ける事は出来ない)のですが、steam版だとどうやらエンディング後再びゲームを起動すると問答無用で『最初から』になる仕様のようです。
また数時間このストーリーを追うのは正直しんどいのでわたしはもういいです……という気持ちでゲームを閉じました。


わたしの『The Stillness of the Wind』プレイ、


……死とは誰にでも平等に訪れるものですが、このゲームの登場人物たちの“死”はわたしの目にはどれもとても悲劇的に映りました。
だって、これは老い先短い老女の人生が徐々に閉じてゆく『自然の摂理、人間の理』を悟るような物語ではないのです。
彼らへの“死”はある種とても暴力的に描かれ、理不尽でとても唐突なものに見えます。

 

「君の事がずっと愛しかったから、どれだけ危険でも君の元へ手紙を届ける事を後悔したことはない。けれど自分ももう他の兄弟のところへ行かなければならない日が来たようだ」と告げてタルマの元を去っていく行商人。
彼も老人ではありますが、世界がこんなことにならなければもっと生きられたのかもしれないと思わせる悲しい別れでした。

行方不明となり、恐らくもう二度と生者の世界へ戻ってくることはないのであろう妹からの手紙。
タルマたちが何世代にもわたってずっと守り続けていた大切な農園は天候不良や忍び寄る死の臭いによって徐々に、しかし確実に全てが奪われていく。
そしてついに何もなくなってしまった彼女の元へ届く差出人不明の手紙は恐らく彼女の娘、ソラからのものでしょう。
不穏な雰囲気を纏うその手紙の最後はこう締めくくられています。
『お母さん 家に帰りたいよ』
老いも若いも関係なく突然に、そして平等に“死”にのみこまれてしまったらしい世界で、恐らくタルマの娘であるソラもどこか遠い所へいってしまったのだろうと解釈せざるを得ない手紙でした。
(途中でガルザから「フェスティバルで行方不明になった人たちが戻り始めている」という手紙も受け取った覚えがあるので、そこはまだどういう事なのか理解ができず引っかかっていますが……)

 

タルマはソラからの最期の手紙を、一体どういう気持ちで読んだのでしょう。
どういう気持ちでたった独り、孤独にあの農園で生涯を閉じたのでしょう。
これではあまりにもタルマが可哀想で、そしてどこまでも救いが無いと感じました。

 

これはわたしにとって、“回避できない死というものを少しずつ受け入れるゲーム”ではなく、“理不尽に蹂躙される生命を眺めさせられるゲーム”でした。
ゲーム開始直後に表示される『女の子が生まれるということは 夜が明けるということ 女の子は昨日から生まれて 明日を生むのだ』という、あの美しい言い伝えは一体なんだったのか……。
女性であるタルマも、そしてタルマが産んだ女性であるソラも、世界の終わりに抗う事はできず(恐らく)死んだ町に飲み込まれてしまった。
再会も仲直りもできないままで。
彼女たちにもう明日は来ない。

 

一足先にあちらの世界へ行った(?)エイミーだけは随分楽しく幸せそうだったので、他の人たちも同じように旅立っていったのであればまだ捉え方も変わっただろうと思うのですが、その他の登場人物やタルマの最期があまりに切なくて。
グラフィックも序盤の雰囲気も綺麗だけれど、手放しで人におすすめしたいゲームではないかな……というのが正直なところです。
最期の雪景色なんて息をのむほど美しかったんですよ。

でも、美しいと感動したのと同じくらい悲しかった。

 

以上。

とてもつらかったです。