積みゲー崩しと備忘録のようなもの

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11-11 Memories Retold

一言感想:ルーシー「たまにお友達とけんかするの。でも、またちょっとずつ仲直りするよ」

 

11-11(イレブンイレブン)をクリアしました。
開発を手掛けた会社のひとつであるDigixArtは、以前遊ばせていただいたRoad96の制作でも知られているフランスの会社です。

 

タイトルの『11-11』は、第一次世界大戦が終戦した11月11日から付けられています。

Memories Retold……(語り継がれる記憶)

 

 

あらすじ

1916年。ドイツで第一次世界大戦のための飛行機を作っているクルトは、ある日、兵士として戦争へ参加している息子の部隊が行方不明になっていることを知る。
息子の安否を知るため、クルトは自ら入隊を志願する。
同じころ、遠く離れたカナダの写真館では一人の若い青年ハリーが働いていた。幼馴染のジュリアに恋焦がれていたハリーは、店を訪れた連合軍の少佐から「女性は兵士に目が無い。私のカメラマンとして入隊する気はないか?」と誘われ、入隊を志願する。
敵軍同士であるクルトとハリー。技師とカメラマンという立場で戦争に向かう2人の運命は、とある出来事をきっかけに交差することになるが……。

ゲームについて

第一次世界大戦を題材とした、マルチエンディングのアドベンチャーゲームです。
主人公2人は敵を撃つ兵士として戦争に参加したわけではありませんが、一般の兵士とは少し違う立場の2人から見た“戦争”を非常に繊細に、そして真面目に描いた作品です。
作中で拾う事の出来るコレクションはゲーム内フィクションではなく、実際に戦時中起きていた事や当時の時代背景などを学べる内容となっています。

 

・日本語音声……なし。英語とドイツ語(若干フランス語も)です。
・日本語字幕……あり。
・主人公……クルトとハリー

クルト(ドイツ軍所属の技師)

ハリー(連合軍所属のカメラマン)※写真中央

・ゴア表現……戦時中の話ということで重い展開が多いものの、油絵のような特徴的なグラフィックのおかげで視覚的に厳しくなりすぎないようになっています。

 

 

クリア後はチャプターごとに再度プレイ可能
取りこぼしたコレクションはその時にも集めることが出来ます。

1周クリア時点でのプレイ時間は9時間でした。

 

store.steampowered.com

 

感想(※この先ネタバレあり)

 

気になったこと

ネガティブ寄りな感想は最初に書いておきますね。

・台詞の途中で字幕が消えてしまうことが多々あり、読み解けない部分がありました。
バグなのか仕様なのかは不明です。

・写真や手紙はクルトとハリーの信念を左右するという説明が出ていましたが、エンディング分岐はある程度決まっているようです。選ぶ言葉によってどこが変わったのかは良くわかりませんでした。

・油絵のようなお洒落なグラフィック。雰囲気が最高でしたが、コレクションも景色に溶け込んでしまうため見辛くて集めづらかったのが少し残念です。

・ドイツ軍の捕虜となったハリー。
捕虜になる前、クルトと一緒に教会から脱出するところがあったのですが、クルトに作ってもらった道を通ることが出来ず捕まってしまいました。
後で調べたところ、やはり通ろうとしていた道は間違っていなかったようなのでこれもバグっぽいですね。無事に通れていたら実績が解除されたらしいです。残念。

・コレクション: 皇帝の退位(1/1) の位置が攻略見ても全くわからず10回以上ロードし直しました。楽しいシーンでもないのでしんどかったです、、。

ストーリーについて

・初っ端、クルトが働いていた飛行機の製造工場(?)なのですが、あんな高いところで命綱もせずに作業してたのか……と衝撃でした。
昔は日本もああいう不安定な高所で仕事をしていたとテレビ番組で観た覚えはありますが、ゾッとしますね。現代でもしもあんなことをしたら毎週転落で死人が出そうです。

・戦争に参加することになったハリー。地雷ならぬ、水雷なんてものがあることを初めて知りました。あんなに大きいんだ……。戦争って怖いな……。
あんなの海に流したら海の生き物もひとたまりもないと思うんですが、今もあんなもの使ってるんでしょうか。

・クルトの報告により、楽しく歌って踊っていたハリーの友人ジャスがドイツ兵に狙撃され死亡しました。
目の前で人が死んだことにショックを受けるハリー。
一方 ドイツ軍であるクルトも、敵兵が一人死んだことを喜ぶ様子はありません。(というか、後でこの日のクルトの日記を読んだところ、かなりドン引きしていました。踊っていただけで撃ち殺されたジャスのことを可哀想に思っているようです……)

ジャスの死を目の当たりにした後、バレット少佐から「前線の写真を撮れ」と命令されるハリー。
前線に行ってジュリアにかっこいい写真を見せるぞ!とはしゃいでいた彼のテンションは下がり切り、前線の写真を撮る=非常に危険な命令を受けている事にようやく気がついた様子です。どんだけぼんやりボーイなんですかハリーよ……。
この辺りのハリーの日記は、読んでいると悲しくなります。ジャス、すごく人懐っこい良い子だったんです……悲しいよね……。
しかし、ジャスを誇らしげに撃ち殺したドイツ軍のフランツはクルトの友達でもあります。
クルトのそばに居るフランツは良い人で、クルトの息子であるマックスの安否を案じてくれているのです。
どちらが善でどちらが悪かなんて、誰にも決められないのが戦争というものなんでしょうね。

・絵が水彩タッチなおかげでどうにか緩和されていますが、この辺りは特に戦争の生々しさが描かれており、怖かったです。どんどん目の前で他の兵士が撃ち殺されていきます。こんなことが未だに現実世界でも起きてるなんて……。

・偶然から共に過ごすこととなったクルトとハリー。
人種が違い、お互いにドイツ語と英語を理解することが出来ない2人は少しずつ言葉を交わしますが、意思疎通は上手く行きません。どちらも相手を気遣う発言しかしていないのに伝わらない……もどかしいですね。
ハリーとクルトは名前の書いてあるものを見せ合い、互いの名前を理解します。

2人はそこで見つけた僅かな食糧と水を頼りに、しばらく共に過ごしたようです。猫に襲われた鳥が回復するほどなので、数日は経っていそうですね。(※ノートによると3日ほど過ごしたようです)
その後色々あった後、ハリーは記念にクルトの写真を撮らせてもらい、2人はそれぞれ自分たちのいる場所へ戻っていきました。

・なんかトロフィーがあるようなので……がんばって……変な動きするサッカーボールを蹴り続けました。虚無……。

虚無……………

・ドイツ軍の捕虜になったものの意外と心臓が強いハリーは、信じられないほど危険な手を使ってクルトの家へ向かう手段を整えました。
ハリー宛てにジュリアが送ってきていた手紙の『今世で会えないなら、来世で会おうね』という一文には戦争の残酷さを改めて感じました。
大切な人と離れ離れになって、生死すらわからなくなってしまった人が沢山いたんだろうな……。

・無事に自宅へ帰れていたクルトは、PTSDに苦しみながら家族と過ごしていました。
一緒にいたハチワレ猫は娘のルーシーによって『ロティ』と名付けられ、クルトの家で暮らしています。
(それにしてもロティ操作時のBGM、すごく可愛いですよね)

・そんなある日、クルトが探していた息子のマックスの手掛かりが見つかりました。ハリーがバレット少佐に頼まれて撮った写真に写っていた捕虜がマックスだったのです。

・クルトとハリーの友情には大きな亀裂ができてしまい、クルトはバレット少佐を探すために前線へ戻り、ハリーはクルトの牧場に居候しながら自分の国へ帰る為の気球を作り始めます。
この辺りは正直、クルトに対してハリーのぼんやり感が異常に際立っていたなと思いました。よくこのご時世にこんなぼんやりボーイで生き延びて来られたねハリー……。

「僕?気球を作る事に決めたよ」じゃねーよ!(大声)

お前……いや、残りの人生を後ろ指さされながらドイツにいるのがつらいのはわかる、わかるけど、よくもまあクルトの牧場に身を置いたままそんなのんびりしたことできるね!?
自分の上官が殺したマックスのお母さんとその妹も居るのに…………と思ったら、カトリン(クルトの奥さん)がすすんでハリーを家に置く選択をしてくれたようです。

・それからしばらく経ち……
ついにバレットの居所を突き止めたクルト。
一方、ようやく気球を飛ばせるようになったハリー。
クルトはバレットを追ってベルギーへ向かい、ハリーはカトリンからクルトを救うように頼み込まれます(数ヶ月ドイツで過ごすうちに、多少の意思疎通が図れるようになった様子です)。

・11月11日、第一次世界大戦 終戦の日。
復讐を誓うクルトの近くまでやって来たハリーに、『ジュリアの元へ戻る』か、『クルトを助けるか』の選択肢が……。

えっ
こんなの……
こんなの……………
わたしがもしハリーなら迷わずジュリアを選びますが………………。
クルトを助けに向かいます!友達だから!!!

エンディングについて

↑の流れで最初に辿り着いたエンディングは『わだかまりエンド』でした。
ハリーとクルトは亡くなり、バレットは生き残るという個人的に1番嫌なパターンでした。
こんなことならせめてバレットを巻き込んで終わらせたかった。
こんな後味の悪い終わり方で終わらせる訳にはいかない。
詫びる気があるならバレットを撃てって、いくらなんでも無理でしょそれは!

その後、6種すべてのエンディングを見ました。
ハリーがクルトを見捨てて故郷へ戻ったほうが後味の良い(?)エンディングが見られるという作りにショックを受け、それと同時に、制作会社が戦争について伝えたいメッセージを正しく受け取ったような気持ちにもなりました。
マックスの件がわかった時点でハリーとクルトは完全なる敵同士であり、二度と友達に戻れることは無かったのです。クルトの娘であるルーシーが言っていたように「お友達とけんかしても仲直りできる」という、子供のように純粋で無邪気なエンディングはどこにもなかったのです。
これは戦争をテーマにした物語であり、そう甘い話ではない。そこをきっとわたしがきちんと理解出来ていなかったんだな……と反省しました。
犠牲者が誰であっても、人の血が流れた以上戦争にハッピーエンドなんて存在しないのだということを思い知らせてくれる作品でした。

 

……ところで、ジュリアを選んだパターンのエンディングでちょっと気になったことがあるんですが。

どうしてハリーがロティを連れているのでしょう?
ロティはワルドナー家の一員になったものとばかり思っていたのですが……。
ハリーもロティも居なくなってしまったらルーシーが悲しみそうです。

キャラクターについて

最後にキャラクターへの印象など。

クルト

妻と2人の子供がいるドイツ人のクルト。公式設定では30代前半のようです。所属はドイツ軍(中央同盟国側)。
クルトは戦争に参加していた息子のマックスを捜すために前線へ参加することを志願し、危ない橋を渡りながらマックスの行方を探っていきます。
息子マックスの年齢は不明ですが、作中で拾う事の出来た少年兵についてのコレクションによると当時は16歳~の少年たちも兵士として戦場に投入されていたそうなので、クルトの年齢も考慮すると10代半ばくらいだったのかなと思っています。
切実な願いを抱えたクルトは日々を必死に生き抜きますが、自宅に残してきた妻からの手紙で娘が病気であることを聞かされます。
そんな中、彼は戦場で一人の青年(ハリー)に出会います。言葉が通じないながらもお互いを友人として認識した2人は徐々に仲良くなっていきますが……。
一度ハリーを敵と認識したクルトは、もう二度とハリーに心を開く事はありませんでした。
最初こそショックでしたが、クルトが父親であり、家族を何よりも大切にしてきていたという点を考えると仕方のない事だなと今は思います。
マックスでは無いと知りながらも、戦地で見つけたドイツ軍の子供たちの遺体を必死に運んでいた姿を見ても、クルトが何を大切にしていたのかはよく分かりますし、人の親であるならそれが正しい姿なのだろうとも思います。

ハリー

地元の小さな写真館で働くカナダ人の青年。公式設定では20代半ばのようです。所属は連合軍。
写真館オーナーの娘である幼馴染に恋をしており、「軍服を着て素敵な写真を送れば、彼女が振り向いてくれるかも!?」と甘い夢を見ている少しぼんやりした青年です。
目の前で捕虜が撃ち殺されてもまだどこか他人事で、「ジュリアに振り向いてもらうために早く前線に行きたいなぁ」と暢気に考えていましたが、戦地で知り合い友人になったジャスが亡くなり、前線で散々怖い思いをしたことで毎日恐怖に震える日々を過ごしました。
後半にはジュリアもハリーを愛しているということがわかりますが……。
正直、ハリーの天然っぷりには驚かされる事も多かったですが、だからこそ逆に憎めない部分もあったのかなと思います。
ハリーがこういう性格だったからこそ、マックスの件が分かった後もクルトの奥さんであるカトリンは夫不在の家にハリーを居候させ続けたのでしょうし(差別的に聞こえたら本当に申し訳ないのですが、素性の分からない異性を女子供しか居ない家にずっと泊まらせるなんて普通に考えたら怖すぎて無理じゃないですか……?それも全く言葉の通じない外国人(敵国)を)

そしてハリーがこういう性格だから終盤の2択(ジュリアを選ぶかクルトを選ぶか)が生きてくるのかなとも思います。良い意味でも悪い意味でも、とにかく純粋で真っ直ぐなんですよね、ハリーって。

バレット少佐

どうしても好きになれなかった人物です。
ただ、制作会社さんのインタビュー(コレクションを集めたら開放される特別映像)の中で「このゲームは誰のことも『悪者』として描いていない」とお話をされていたのがとても印象に残っています。
バレット少佐はハリーに対して厳しく当たり散らしてきた事もありましたが、思い返してみれば、終盤にハリーの身を案じてくる手紙を送ってきたり、クルトとの会話の中でハリーの名前が出てきて「ハリー!?ハリーに何をした!?あの子に何をしたんだ!」と激昂したりしていた事は間違いなくハリーに対する情だったのだろうなと思います。
少佐は少佐なりにハリーに対して『戦争に連れてきてしまった』ことへ後悔があったのかもしれませんね。

 

 

では、今回はここまで。

 

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(↑制作会社が同じです)